2012.09.18 Tuesday

スタジオ・ムンバイ展_Studio MUNBAI “PRAXIS”

乃木坂のギャラリー間で開かれている「スタジオ・ムンバイ Praxis」展。インド建築界を代表する建築家、ビジョイ・ジェイン氏率いるスタジオ・ムンバイのアトリエが「Studio Mumbai in Tokyo」として作られています。

以下、ギャラリーのウェブサイトより——————–

スタジオ・ムンバイの活動の特徴は、敷地の造成から設計、施工といった一連の工程すべてを、建築家と熟練工からなる人的ネットワークにより、手作業で行なうことにあります。スタジオ・ムンバイのワークショップでは、インド各地出身の有能な職人たち(大工、石工、鉄工、金工、井戸掘り工など)約120名が住み込みで働き、ジェイン氏の指導の下、地勢や気候を読み、井戸を掘って水源を確保し、地元由来の素材とそれに適した工法を用いて建築をつくっています。
先祖代々口伝によって伝わる伝統技能を受け継いだ職人たちの確かな技術力は、乾期の猛暑と雨期のモンスーンという厳しい気候条件に耐え得る建物には不可欠なものです。 彼らの知恵と技能を充分に活かしつつジェイン氏の深い思索に導かれて生まれた建築は、その地での快適な生活を約束しつつ、風景と調和した豊かな詩情を湛えています。

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建築は専門的な知識が無くても興味を引かれ、楽しむ事が出来るのは、いろいろな要素がぎゅっと詰まったものだからだと思います。私も空間を作る事には強い興味を持って来ました。

それにしてもここで展示されているものの個々の魅力には、参ってしまいました。ギャラリーのテラスに展示された塗り壁の試作(その展示の仕方の美しい事)、色付けされたタイルのサンプルと染料。あらゆる素材、模型、丁寧に描かれたスケッチ、たくさんのモックアップ。展示を見ていて、本来建築物は木や土や植物や水から作られていたんだということがしみじみと蘇って来ます。

B倍サイズくらいの板に図面が描いてあるのですが、全体にマスキングテープが貼ってあります。これは紙が貴重であるインドで、紙を使わずに図面を引くアイ デアでした。間違えたらその部分のテープをはがして貼り直せば良い。この合理的なやり方は、全く今の私たちには考えも及ばない方法です。物としても美しい 図面は、美しい建築物には必要な物なのでしょう。

この可愛い風情のものは何だ?! 棚に並べてある木のオブジェのようなものを見つけて釘付けになりました。聞いてみると、設計を考える初めにあるもの、まずイメージを作っていく事に使うものでした。サイズはいろいろ、着色してあったり、穴があけてあったり、模様が描いてあったり。仕事机の上にパソコンは無く、自然素材を身近に置いて、触りながら形や構造を考えていくやり方は、この人たちは当たり前のようにインドという地に根を生やしていて、そこからいろいろなものをいただきながらものを作っているのだと、これは夢のような仕事の在り方だと思いました。

たくさんのケースを考えるのではなく、ひとつのやり方を突き詰めていく一分の一の考え方なのだと言う事や、建築に関わりたいというすべての人に門戸を開いた集団である事を、ギャラリーの方から聞きました。その通り、手の内を全部見せているという印象の、とてもオープンな展覧会です。残念ながら会期の終了が迫っていますが、会場の写真で、自然の中から選ばれたざらざらとした素材の手触りが伝わればと思います。

スタジオ・ムンバイ展 Studio Mumbai Praxis
2012年7月12日(木)~9月22日(土)

ギャラリー間

 

2012.09.08 Saturday

津田直 写真展 〜9/25まで キャノンギャラリー Sにて

津田 直さんの写真展 Storm Last Night/Earth Rain Houseの展示とトークイベントに行きました。ギャラリーのスペースが生かされて、変化も驚きもある、本当に素晴らしい展示でした。
特注のカメラ、6×17インチのパノラマフォーマットで撮影された「Storm Last Night」のアイルランドの島々。「Earth Rain House」はスコットランド北方の島々を6×7のフォーマットで撮影しています。ここでの展示は、CANON製インクジェットプリンタでの制作が条件になっていて、銀塩で制作を続けて来た作家の、最初のインクジェットでの制作になりました。

「Storm Last Night」の6×17インチの作品については、少し特別な経験をしています。それは、hiromi yoshiiギャラリーが清澄白河にあった頃に見せていただいたオリジナルプリント。そしてその写真集。今回オリジナルプリントを元にデータ化され、大きくプリントアウトされた展示、いわば作品が辿っている道をついて来たようなものです。印画紙と印刷と出力の違いは歴然とあるものですが、それぞれがその世界の中でぎりぎりまで表現されている完成度でした。

6×17インチの特注カメラにはファインダーが無い事、電車とバスと自転車と足を使ってその場所にたどり着き、強風の岸壁で撮影していたこと。それが普通の事ですよ、というような感じで過酷な状況を話している津田さんは、大変な事をやってのける強さと確信があります。ファインダーをのぞいていないとは思えない、ギリギリに入っている遠くの半島や飛ぶ鳥が、撮影時の研ぎすまされた津田さんの感覚そのものでした。

写真はどのフォーマットを選ぶかで、全く違うものになると思っています。35mmはリアルで、4×5は大きく力強く安定感があり、6×6は良くも悪くもカッコがつく感じ。その中でも6×7は一番スキがあって曖昧さがあるフォーマットだと思っていました。(これはあくまでフィルムの世界の話しですが。)「Earth Rain House」の作品は、その6×7で撮られています。風景を撮るのに6×7なんだな。私はそのことが引っかかっていたのですが、津田さんの6×7は空間を切り取ってはいない、写真の終わりが終わりではなく外側に続いている、そう思いました。偏った見方かもしれませんが、曖昧さが生かされていると言ったら良いのか、この6×7フォーマットがこの作品の魅力を作っていると思います。

5000年前の先住民族の住んだ土地を巡って、津田さんが何を見つけようとしていたことは何でしょうか。古代の自然と人との関係は、ここまでが海でここからが人の住む場所というような区切りが無く、大地の上に人がいたと言う事だけではないか。自然と人が繋がり交わした様々な事の痕跡から、私たちが大切な事をもう一度学び取ることができるかどうか。そのための写真の表現とはどういうものか。作品を見ながら、私はそんな風に思いました。

今回の津田さんの写真展の帰り道、写真作品の質と言うようなことを考えました。上質でいて敷居が高くはなく(低くはない)懐が深い、(私流の解釈では、そ れは曖昧さのなせる技なのですが)でも、見た事の無い特別なものと言うようなことです。そのことをはっきりと思った展示でした。

津田 直写真展:Storm Last Night/Earth Rain House
2012年8月20日(月)~9月25日(火)
キヤノンギャラリー S(品川)