2012.10.25 Thursday

Photo 写真の人_09

————————竹内弘真さん

竹内さんは2010年の写真塾 resist(主宰 吉永マサユキ・森山大道)に参加されていて、たまたま私がその修了展のDMを作ったことで知り合いました。三浦半島の人々を撮影している作品がとても気になって、度々見せていただいていたのですが、そこに写っている人たちは無邪気に、好意的に、親しみを持ってレンズを見ています。
出会った人に「写真、撮らせて下さい」と声をかけて、ごく短時間でいい表情をつかまえるのはなかなか大変なこと。ごく短い時間の撮影は、どういう心でレンズを向けるかに尽きると思います。

竹内さんは、三浦半島を歩き、声をかけ、レンズを向け、すこしドキドキしながら、ややあわてふためいてシャッターを切っているのかもしれない。作品を見ていて、時々ちょっとしたズレのような物を感じて、撮るときに、ちょっとあたふたしていませんか?と竹内さんに聞いたことがあるけれど、やはりそうらしい。できるだけ素早くいい表情を捕まえたいから、慌ててしまう事がほとんどです。と。
空間の作り方や距離感は、お手本がある訳ではではなく、そこは作家の人間性が作るところ。場の空気が伝わるような、一枚の写真の雰囲気を決める物だと思うし、撮る人のそんな様子が写真の中から伺えるのだから、写真って本当に際限なく面白い物だと思う。

三浦半島は、まだまだ昔からの海のお祭りが残っていたり、学校から帰った子が日暮れぎりぎりまで浜で遊んでいるような、大らかないいところだそう。きっと、その土地柄も竹内さんに合っていて、撮られる側には土足で踏み込んで来たような違和感が無いのでしょう。まだたくさん撮るべき場所があるそうだから、これからも、ちょっとだけあたふたしながら撮ってほしいなぁと思います。

竹内弘真ホームページ

2012.10.20 Saturday

小林紀晴写真展_遠くから来た舟 キャノンギャラリー Sにて

小林紀晴さんの写真展が11月6日(火)まで、品川のキャノンギャラリーSで開催されています。
日本全国の聖地を巡り、古くから伝承されているお祭りや神事を撮影した68点の展示は、
宮城県南三陸町の海の写真で始まります。
紀晴さんの出身地である長野県の諏訪御柱祭「木落し」「建御柱」の作品や
同じ長野県野沢温泉の道祖神祭り、
沖縄県宮古島の伝統行事で姿をみせる来訪神 (パーントゥ)など、
祭りはあの世とこの世をつなげているものだということを教えてくれるたくさんの作品。
巨大な櫓に火がつけられ、もうもうと煙が出ている野沢温泉の道祖神祭りの一枚は、
ハッピの袖口に火が燃え移っていないだろうかと不安に思わせるような、
危険な雰囲気に包まれていました。

作品の説明リーフレットの紀晴さんの文章も素晴らしいです。
早池峰神社例大祭 遠野・岩手県の作品に添えられた言葉
「写らないも の、撮れないものを、できるなら捉えたい。
古代に生きた人の生を捉えたい。撮れないからこそ。
こんな光景に触れたとき、私はそれを見たような、撮れた ような気がする。」

キャノンギャラリーS

 

2012.10.19 Friday

スケッチ・オブ・ミャーク

今日は打ちのめされた映画「スケッチ・オブ・ミャーク」の話を。これは沖縄県宮古島諸島の島々で口承で伝えられて来た、神事で唄われる唄と日常的に誰もが歌う唄を記録した映画です。映画全体の底の部分には、琉球と呼ばれていた頃からの島自体の過酷な時代がありますが、それを伝え聞き経験して来たおばあたちの穏やかな語り口は、これ以上の優しさは無いだろうと思うような慈愛に溢れていました。
年をとればとるほどエネルギーが強くなり、なんと個性的、魅力的なことか。大変な仕事を少しでも楽にするために歌を歌いながら働いたというような、彼女たちの経験して来た悲しさの種類や辛さの度合いは、多分、私たちの想像を超えているだろうと思うけれど、一生懸命に生きる事で見つけられる幸せなことや、生きている人間のいとおしさは、間違いなくこの映画が思い出させてくれたと思います。
唄の中には随所に神様へのお願いの言葉が入って(例えば、「今日も良き日でありますように」というような、ごく普通の言葉)いたり、朝、子どもが両親を起こす時の唄には、「おかあさん、朝ですよ、鳥が鳴いていますよ」「お茶をどうぞ、一杯のお茶から一日が始まります」というように(正しい歌詞ではありませんが)、普通の生活の中にあるあたり前なことが、丁寧に書かれている事が分かりました。昔、太陽や海や自然が神様だったころ、毎日何度もいろいろな神様に手を合わせていたはずでしょう、自分一人で生きているのではないでしょうと、そう言われている気がします。この映画を観ている時、とても不思議な音と歌声を聞いた気がしました。音楽を体の奥の方で聴いている感覚があって、自然と涙がこぼれてしまうというのはすごい体験です。これらの宮古島の唄は、神様にお願いして生きて行こうとする、人間の弱いところや小さく可愛らしい存在そのものが作った、神様への捧げ物なのだと思います。
沖縄の唄とは違って、奄美の島唄などの歌い方に近いような(朝崎郁恵さんのCDで聴いたのは、裏声やこぶしをきかせる歌唱法)印象が所々にありました。神事の時に女性達が着ているお揃いの着物や髪型、両手を上に向ける動作も慎み深く、印象的です。
都内での上映は終了してしまいましたが、関東では横浜シネマジャック&ベティで12/1からの上映予定があります。

スケッチ・オブ・ミャーク公式ウェブサイト