2015.01.12 Monday

中藤毅彦写真展『STREET RAMBLER』〜1/18 渋谷ギャラリー・ルデコ

写真家 中藤毅彦さんの写真集『STREET RAMBLER』の発売に合わせて、渋谷のギャラリー・ルデコで同名の個展が始まっています。
今まで何冊も写真集を作って来た中藤さんが自ら編集・セレクトして出来上がった、ストリートフォトグラフィーの集大成とも言える写真集『STREET RAMBLER』。東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、モスクワといった都市とその人々のリアルな姿を撮った作品です。写真を印刷した何種類かのカードが、シュリンクされた表紙に挟まれて、海外から届いた本のような雰囲気があります。

中藤さんのモノクロのトーンは、被写体が強いコントラストとくっきりとしたアウトラインで表現されていますが、その強さの中には、繊細さを感じる場所があると以前から思っていました。このことは、もともと中藤さん本人の中にある温かさともうひとつ、相手に対する純粋さが作るものだと、今回の展示で実感しています。

特に私個人の思い入れと合せて、その街を捉えるにはこの写真だと思ったのが、デモ行進中に旗を身体に巻いてカメラを見ている男性のカットです。折しも、ルデコでの個展が始まる二日前、パリでの新聞社連続テロ事件があり、11日にはその 犠牲者を悼むための大行進がフランス各地で行われて、第2次世界大戦中の1944年のパリ解放よりも、98年のW杯のフランス優勝よりも多い参加者だったと報道されています。
そのニュースをテレビで見ながら、中藤さんのこの一枚を思い出していました。デモもストも行進も多いフランスならでは、という印象もあったと思いますが、パリを撮った多くの作品の中で、ああ、そうそう、フランス人が写っていると、しばらく出かけていないパリを思いました。特にヨーロッパは移民が多く、欧米だけでなく外国に住む事の難しさは想像がつきます。事件後、襲撃されたシャルリー・エブド誌の表紙に使われた「Tout est pardonné」という言葉の訳についても、解釈の違いから本来の言葉の意味を取り違えて報道されているという意見も見かけました。私たちが得た情報は、もしかすると誤解だらけかもしれません。フランスの人たちは殺人という最大の暴力が抗議の手段に使われたことに怒り、それが大行進につながったのですが、どんな表現であっても自由であるべきという主張に、質が問われないとしたら賛成はできません。しかし、今回の人種を超えた大行進という行動をトリミングしてみると、少なくともそこから見い出せたことは、暗い方を見ずに明るい方を見るというような姿勢でした。『STREET RAMBLER』の会場をぐるっと見渡してみると、中藤毅彦さんはどの人にも丁寧に向き合い、まさに街や人の明るい方を見ながら撮っている。写真の中に繊細さを感じる理由が、分かった気がします。遠い国で起きた事件が、展示会場では目の前に迫るものとなりました。写真は人が撮るもの。そして、その時を写すもの。つくづくそう思った展示でした。(長尾)

中藤毅彦 写真展『STREET RAMBLER』
会場:ギャラリー・ルデコ6
会期:2015年1月10日(土)~1月18日(日)
開場時間:11:00~19:00 *月曜定休

2015.01.01 Thursday

新年のごあいさつ

写真のこけしは、宮城県松島町のこけし屋さんのものです。2011年の震災の時に津波で流され、その後発見されて店主の元に帰って来たこけしだそうです。傷ひとつないこけしを手にした時、大きな困難をみじんも感じさせない穏やかな雰囲気に救われるような思いがしました。そばに寄り添うエジプトの猫の坐像と小さなイノシシは、日本ではない全く別の場所から来た物。言葉は通じない?でも、何だか気持ちは通じ合っていそうです。

美術や写真が好きで、昨年12月にBook Photo PRESSというアーティストブックを制作するレーベルを作りました。作家と、一緒に考えてくれるメンバーと、それを見て楽しんでくれる人がいて、初めて作ることができる物です。いまさらですが、様々な個性が集まって協力し合い、物作りをする楽しさをしみじみと感じています。みんなで美しい物を作って行きたいなぁ。と、想像が広がる新年です。

今年もどうぞよろしくお願いします。