Book Photo PRESS

2015.05.31 Sunday

[New PRESS]P.S.29_松谷友美

写真のアーティストブック一冊目が、ようやく出来上がりました。
写真家 松谷友美さんの「P.S.29」です。

松谷さんと初めて一緒に制作したアーティストブックは、
松谷さんが昨年10月に制作したブックレット「29」の続編とも言える内容で、
29歳の一年間に撮影された写真の中からセレクトされました。
「P.S.29」のタイトル通り、松谷さんが29歳の自分に、
追伸のメッセージを送るというような気持ちでカットを選び、構成しています。
デザインする側としては、松谷さんらしさを全面に、それに加えて少し新しい顔をのぞかせようと思いました。

落ち着いて日常の風景を撮っている松谷さんの作品は、一見、私たちも見慣れたもののようでいて、
よく見て行くと独自の目の高さ、視点がある事に気付きます。
何気ないものの中に、ちょっとした面白みが潜んでいて、曇り空も暗くはなく、雪景色も寒くはなく、
少し待ったら明るく暖かくなっていくだろうと思えるような写真は、
ごく小さな声で人を励ましているような気がしてくる作品です。
パンっと晴れた真っ青な空よりも、少し青さが見えているくらいの空の方が、案外ほっとして安心できる。
空に例えれば、そんな作品だと思います。

途中のページには、三角のコーナーにフィルムのベタ焼きのが何コマか切り取られて挟んであります。
この中にはセレクトしたカットの前後が写っていて、松谷さんにとっては自分が見ていた風景、
ものを見せるということになり、見る側は松谷さんの29歳のある時間を垣間みる事になります。
デジタルとフィルムで撮影するという事の決定的に違う点は、
こうして見ている物事がストーリーのように残るという事です。
それをストーリーと見るかどうかは見る側の判断に依るものですが、
フィルムはデジタルデータのように消す事はできない、でも逆に写した物が写っていないかもしれない。
ただ写真を撮っているという事実だけがそのまま残ります。

表紙のデザインについて、少しお話しします。
表紙は列車の窓から見える山の風景を左右反転し、さらに透明の青い色を重ねました。
写真自体を青く加工しているのではなく、青い色の後ろ側にこの風景がカラーのまま重なっています。
29歳の自分が乗っていた列車を外から見ている、という意味合いで画像を反転し、まだ充分に若い29歳という年齢と、
これから次の年代に成長して行く時の不安と期待を感じさせるように、すこし強い青い色を選びました。

夜と朝の間の時間、空気が青くなる時間に外に出た事があるでしょうか。
青い空気に包まれていると、その後、シルエットだった木が緑に見え、だんだんと明るく現実が見えて行く、
夢から現実に移行するような時間です。
朝になる事がちょっと残念で、夜が名残惜しいような気持ち。
でも、思い直してぐーっとノビをするような時間。
29歳は、そういう夢見るここと現実に直面する狭間にいる年齢のように思います。

製本は数カ所に穴をあけて糸で綴じるという、昔からあった製本の原型のようなやり方をアレンジしました。

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松谷友美 アーティストブック
「P.S.29」
A5変形 205mm×145mm  36p
オリジナルコンタクトシート付

定価:¥2,500+税
商品NO.003_01

作家:松谷友美 写真家 Tomomi MATSUTANI photographer

制作:Book Photo PRESS 2015
 エディション:50

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☆「P.S.29」は、松谷友美ウェブサイトにて、PayPalでのお振込で購入いただけます。

☆コンタクトシートは数種類ありますが、全て作家の手作業で貼られていますので、写真と同じものが届くとは限りません。