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03 赤と黒の本
その1「サンローランとルル」

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今年の6月2日に71歳で亡くなった、フランスモード界の帝王と呼ばれたイヴ・サンローラン。あまりにも有名なこのファッションデザイナーは、クリスチャン・ディオールのアトリエに勤めていた20歳の頃、過激でかわいい絵本を描いていました。1957年に出版された初版本は、一枚ずつバラバラになった状態でカルトンに挟まれた豪華本だったそうです。それを2002年にパリのセレクトショップ・コレットが300部限定の豪華版で復刻しました。その後、書籍の形で出版され、2005年には日本語版も出版されています(「おてんばルル」東野純子訳/河出書房新社)。

タイトルの【vilaine】を辞書で調べてみると。
1:汚い、醜い
2:聞き分けのない
3:不愉快な、危険な、下劣な
どおりで絵を見ただけでも何となくあやしい匂いが漂っているはずです。第一印象の可愛らしさではだまされません。日本語版から内容を引用させていただくと、お話の中のルルは、こんな調子。
・ 公園に赤ちゃんを連れて散歩に来ていた母親に「何てぶさいくな赤ちゃんなの!」と騒ぎ立て、悲観した母親は救世軍の門前に赤ちゃんを捨ててしまう。
・ 消防士の気を引きたくて、アパートに火をつける。彼の恋人はルルによってベッドに縛り付けられていた…。めでたく消防士とルルは結婚。
・ バレエの才能を認められて、オペラ座から出演依頼が来る。大統領や社長、公爵婦人やプリマドンナまでが集まった。幕が開くと、ルルは何と裸で舞台に登場した。

エレガンスの極みを表現したデザイナーの中に、こんなに過激な悪魔が住んでいたとは。ルルのモデルはディオール時代の同僚のようです。しかし、「私はパラノイアかも」という冷静でちょっとまじめなルルの台詞を見つけて、ルルはサンローラン自身かもしれないと思いました。それにしても、人の形をなんて自由自在に描くのでしょうか。帽子と顔と両手と太い胴体。スカートと太い足。これらのパーツを使って、いくらでもいつまでも、ペン先から湧き出るようにルルを描く事ができたのでしょう。恵まれた才能の使い切れない部分が勝手に動いていたのかもしれません。
この本のように、少ない色数でまとめられたものは、内容の完成度が問われる面と、逆にその割り切りの良さで強い印象を与える得な面があると思います。いつの間にか私の本棚にも、赤と黒の本が何冊も納まっています。
題 名 「悪い子ルル」
La vilaine LuLu
Yves Saint Laurent
(c) Tchou Editeur

著 者 イヴ・サンローラン

サイズ 210mm×315mm

購入した時期 2003年頃

購入した場所 フランス パリ サンジェルマン大通り沿いの書店