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04 長い長いさんぽの本

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漫画家・根本進さんが取材して廻った、国内外の動物園や水族館の観察日記は、1965年から1998年、319回にわたり「どうぶつと動物園」(財団法人東京動物園協会 刊行)に連載されていました。それをまとめたのが「クリちゃんの動物園さんぽ」です。クリちゃんの4コマ漫画(1950年代、朝日新聞に連載)で有名な根本さんと動物園の付き合いは、ゴミをくずかごに捨ててもらうための看板(クリちゃんとタコがゴミを拾っている絵)を描いた事が始まりだったそうです。手描きの看板を置くような、まだのんびりした時代だったのでしょう。
332ページの重みのあるこの本を見て行くと、観察の細かさ、こだわり方、表現の仕方に驚かされます。動物と同じように園の係の人たちやお客さんも観察し、性格やクセまで分かりそうな特徴を絵と言葉にまとめています。それは、例えば飼育係の人のくわえ煙草だったり、腕組みだったり。モノクロームの筆のタッチの強弱が画面を引き締めていて、何を一番に伝えたいのかが一目で解ります。海外の取材も多く、タンザニアのサファリやケニアのナショナルパーク、サンディエゴZOO、ヨーロッパの12のZOOめぐりなどなど。絵と言葉で記録する簡単ではないこの方法は、誰にでもできることではありません。時間をかけたとても贅沢なさんぽだったのだと思います。
根本さんはもともと大変な動物好きで、2002年の1月、亡くなるその日の午前中も上野動物園へスケッチに行っていたそうです。あとがきに、「スケッチのために動物を眺めているといろんな発見があり、飼育係の人たちからも面白い体験談を聞く事ができました。」とあります。あまりに何気ない言葉ですが、その通り、この本は何より生きている動物を観察することのおもしろさや、動物園の楽しみ方がたくさんあることを教えてくれます。
電車の中で小さな男の子が母親に、こんな事を言うのを聞いた事があります。「だって動物園のネズミは生きてるよ」。ディズニーランドから帰って来た男の子は、ぬいぐるみのミッキーに何を感じて、母親にこう言ったのか解りませんが、少なくともこの子は生きているネズミの何かに興味を持っているのでしょう。その何かから目を離さずにいることが観察です。この本がいつか復刻され、男の子が見つけてくれるといいなと思います。
題 名 「クリちゃんの動物園さんぽ」
著 者 根本 進
出 版 財団法人東京動物園協会
サイズ 257mm×182mm
購入した時期 1999年
購入した場所 恩賜上野動物園