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07 葉っぱの本

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この本はフランス、ルーアンの美術学校教師であるMrinette Cuecoという人が出した押し葉、押し花の本です。現在までシリーズで7冊出ている中の一冊。
子供の頃、押し花をしたノートを開いて、挟んだ花や葉っぱの色がすっかり変わってしまっているのを、がっかりして見つめた経験が誰にでもあると思います。この本にぎっしり挟まれている大量の植物は、色が変わることを見越して作ったのだろうと思われる、著者の美意識が強く感じられる構成です。

著者は庭園学(特に日本庭園)の専門家で、1978年から野草を使った作品を制作しています。これは資料として収集した植物を、押し花という美術作品として制作したということが推測できます。この作者のような美術家でなくても、研究のために収集した素材(植物に限らず、昆虫や鉱石も)を標本のような形に仕立てるということ自体、芸術的な作業と言えるのかもしれません。

ポスターを折り畳んだ形のカバーをはずすと、植物を挟んだ紙をざっくりとまとめたような綴じ方がそのままむき出しになります。はずしたポスターの内側には、集められた植物がぎっしり印刷されていて、何というか、リアルという事を伝えるお手本と言ったらいいのか。すっきりすました顔つきのカバーからは想像できないこの本の濃さ、強さが隠れていました。
この造本は、フランス的なもののひとつであると感じています。これはごく個人的な感じ方だと思うのでうまく説明できませんが、ひと言で言えば、最初のアイデアをそのまま形にしているような印象があるということでしょうか。細部のこだわりを守りつつ、どこか抜けの良い軽やかさを残しています。流通や諸々の事情など、いろいろなことから自由でいると、こういう本が出来上がるのかもしれません。

この本のシリーズには常緑種、毒性の植物、湿原の植物、ロンゲイルー湿原の植物、ドクターガシェの庭、というようなタイトルがついています。カバーのデザインはどれも同じパターンです。その中でも海藻が押し花のようになっている異色の一冊。
本来の目的を飛び越えて、著者である美術学校教師は制作にのめり込んだのでしょう。フランス語を訳してくれた友人もうまく訳せないと言っていた、やや哲学的匂いのする書名やタイトルと相まって、磯のわかめの集合は、だんだん抽象絵画に見えてきました。これもフランスマジックでしょうか。
あきれるほどの海藻、海藻、海藻。この本を見て、自然の生んだものの形の多様さに驚き、そしてオタク的なこだわりは、普段何気なく見ている者さえも、芸術的なところに引っ張って行く力があるのだと思いました。
題 名 Herbailles, petits herbiers de circonstance : Les herbes de la Saint-Jean
(c)Editions du Panama
著 者 Mrinette Cueco
写真 David Cueco
サイズ 226×230
購入した時期 2007年10月
購入した場所 パリ チュイルリー公園内 植物専門書店