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08 人を語る本

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この本は三岸節子という、ひとりの画家の作品とポートレート、そして作家本人の直筆の文章や日記などで構成されています。

私は絵や写真を見るときに、展覧会場であろうと雑誌であろうと、ただそれだけと向かい合うことが先決だと思っていて、題名や説明などの言葉はいつも後回しにします。言葉はこちら側の見る目をコントロールしてしまうくらいの影響力を持っているから。でも、この本を見ていると、寄り添う言葉は大変な説得力を持って作品や写真の一部になり、読み手が作家の世界をより深く感じ取れるよう、手助けする存在になっていると思います。

自分だけの、オリジナルの言葉を持つ作家はたくさんいますが、三岸節子もそのひとりです。中でも、1955年(49歳)に初めてパリへ渡った時に書いているこのさりげない一文が、とても印象的です。
「巴里に着いて最初に私のしたことは、まず胸を張って堂々と歩くことでした。」
50年以上前のパリで、着物を着た日本人女性は、周りの人々にどう見られ、どう受け入れられたのでしょうか。そのことを考えると、この言葉から作家の強い意志と気概のある精神が読み取れ、そして、同時に力強く抽象化された花、風景などの作品を見て、何とも言いがたい勇気がわくような気持ちになります。

大磯のアトリエで撮影されたポートレートも、画家と近い関係の写真家だったことがわかるような、構えることの無い、しかし、少しの緊張感のある、いい写真だと思います。庭の樹々に囲まれて自然の中にすっぽりと包まれたような写真には、こんな言葉が添えられています。
「神様がいらっしゃると思うんです。この宇宙にね。」
強い心の持ち主でありながら、絵を描かせてもらっているという謙虚な気持ちを持ち続けた人。三岸節子は、今まで何度も展覧会に足を運んだ、大好きな画家のひとりなのですが、この本は、創作するということに対して作家のあるべき姿勢を教えてくれる大切な一冊です。

作家直筆の前書き、作品と日記、散文、ポートレート。どうやってひとりの画家、人間を伝えるか。そのことがよく考えられた本だと思います。
題 名 三岸節子自選画文集 花こそわが命
著 者 三岸節子
ポートレイト撮影 笹本恒子

出版社 株式会社求龍堂
サイズ 233×190
購入した時期 2000年頃
購入した場所 都内書店