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12 毛皮の本

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久しぶりに、パリ6区のSevres Babylone(セーブル バビロヌ)にあるCHANTELIVRE(シャントリーブル/13, rue de Sèvres 75006 Paris)という絵本専門店に行きました。ここは約5万冊の絵本が揃っているそうですが、その時期に開催されている美術展などの関連書籍や写真集なども扱っていて、本当に何時間いても楽しい書店です。
フランスの絵本のキャラクターで有名なのが、「ゾウのババール」(ブリュノフ作/フランス1931)。イギリスやドイツなどの童話に比べて、重厚でなくずいぶん軽い調子のイラストレーションなのがフランスらしいところ。しかし、ババールのお母さんが撃ち殺されるところからお話が始まる、かわいいだけの童話ではありません。

Toutou Tondu(毛のないワンワン)は、男の子が犬の短い毛をのばすためにいろいろな事をしたら、毛むくじゃらの犬に大変身。しかし、どんどん増える毛皮をもてあまし、結局美容院で元の姿に戻した、というお話。この本もまた、色鉛筆で書かれたイラストレーションはごく軽いタッチです。可愛らしい絵でも、時々ブラックな匂いを感じる事があって、それはヨーロッパの絵本に共通しているような気がします。

この絵本をひと目で気に入った理由は、ご覧の通り、毛皮付きの表紙です。最初の思いつきをそのまま作ったような、なんてストレートな楽しいアイデアなのか。毛皮が付いているからと言って、ビニールでパックされているわけではないので、ワゴンの中でぼさぼさになって並んでいました。こんな売り方が可能なのは、この書店ならではなのでしょうか。(たまたま側にいた小さな女の子と私は、ぼさぼさの毛皮を見かねて、5冊分を一緒に手ぐしでとかしました。)もし、ぴっちりとビニールで真空パックされていたら、ずいぶんと印象が違っていたはずです。
内容を訳してもらうと、発音を練習する目的の絵本だと言う事が分かりました。「~ゥ、~ュ」の発音練習になる文章は、なんだか可愛らしい音が並びます。冒頭はこんな感じです。

トゥトゥー・トンデュ
アン・マタン・ト・リュ・デ・モントゥー
アン・トゥトゥー・マ・フェ・レズュー・ドゥー
アン・プティ・トゥトゥー・トゥー・トンデュ
ソンエー・カロ・エ・ソン・ポワル・ドリュ
ル・トゥトゥー・マ・トゥー・ド・スイット・プリュ

物語の訳もご紹介します。現実的なところから、いつの間にか妄想の世界に飛んで行き、また現実に戻ると言うような、子どもの頃に誰もが持っていた感覚を思い出しました。

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“毛のないワンワン”(訳・手塚雅美)

ある朝 雄猫通りを歩いていると
一匹の犬が僕のほうをやさしい目で見ていた
小さな、毛の短いワンワン

ちょっと気取っていてぎゅうぎゅうの毛をした犬
僕は彼をすぐに気に入った

奴はすごく魅力的だけど
毛が短かった

僕はそのために何でもやった

シラミ対策のシャンプー、すんごくソフト仕上げなシャンプー
タケノコのローション

アルマジロの甲羅 エキス
トナカイのよだれの石けん

でも何も変わらない

本当に何も変わらない

でもある朝…

次の日も…
奴はもう“毛のない犬”じゃなかった

毛深くて
毛むくじゃらで
隙間がないくらい毛がいっぱいで
ひげも生えた
口ひげをはやした

もう止まらない!

その毛を剃って
僕は絨毯を作ったり
カーテンを作ったりベッドカバーも作った

灰色のソファにも毛をかぶせた
これすべて僕のワンワンの毛なんだぞ!

靴下、ベスト、手袋、ズボン何でも作った

でも毛はまだ生えるんだ!
そこらじゅう毛だらけさ!

オルテンスおばさんには100%犬の毛製の鞄をプレゼントした

つるっぱげのエドモンドおじさんにはかつらを

あらゆるところで僕のワンワンが噂になった
みんなその毛を欲しがったんだ

僕に電話をしてきて
毛が買いたいと言った

英国女王は護衛隊の帽子に毛を欲しがったし
ビジネスマンはつけ髭を作りたいと言い
中東の王様はこの毛で絨毯を作りたいって

僕は丁重にお断りした
電話を切るとため息が出た

以前の毛のないワンワンが恋しくなっていたんだ

僕は奴を背負ってお忍びで出かけた
みんな大きなコートだと思ったはず

僕の自転車で鼻に風を感じながら進んだ

ナバホ族の賢人、
エスキモーのシャーマン、

アメリカのマジシャン、
アフリカの聖者、
すごく楽しかったけど
どこへ行っても
僕のワンワンの毛を減らすことはできなかった

僕は途方に暮れて
奴は申し訳なさそうに
家に帰った

僕は奴を美容室に連れていくことにした

オシャレなルネのところで一日を過ごした

「どう?気に入った?」「ひゃー!」

(あまりの恐怖でそれは起こった)

「完璧だ」

※ 犬と一緒にいると、まったく毛のない犬にすごくやわらかい毛が生えて
一緒にトンブクトゥを旅したいと思うことがあるんだ。
題 名 Toutou Tondu(毛のないワンワン)
著 者 Delphine Perret デルフィーヌ・ペレ
出版社 (c)L’Atelier du Poisson Soluble
初 版 2005年11月
サイズ 155×155
購入場所 2009年11月 パリ/CHANTELIVRE